むかしの話 2
トトはたいそう喜んで、
「そうか。おまえが行たてくれるか。おまえは何という感心な子じゃ」
と涙ながらにいいました。
「じゃばってん、父っちゃあ、あたいに、れんげ草の花をカマスで一俵、姉さんたちが取ってきてくるれば行きましょう。」
「そらあ、かんたんなことじゃ。おい、こらこら、かしら娘と二番娘、はよう田んぼに行たて、れんげ草の花をクんでこい。」
しばらくしたら、姉たちがれんげ草の花をつんできました。
三番めの嬢は、そのれんげ草のカマスを夫になる黒いものに背負わせて、山へ向いました。
途中に川がありました。
娘は川の水が深くよどんでいる淵に行って、れんげ草の花を全部投げいれてしまいました。
そして、黒いものに向って、
「おまえがあのれんげ草の花を全部沈めてしまえば、わたしはおまえの嫁になりましょう」
といいました。
それを聞いて、黒いものはたちまち、シャクワッと水しぶきをあげて淵にとびこみました。
そしてれんげ草を沈めにかかりました。
夢中になって左手で右手で、あるいは右手で左手で沈めようとしますが、ここを沈めるとあそこが浮き、あそこを沈めればここが浮きして、いっこうにはかどりません。
シャクワッ、シャクワッ、シャボッ、シャボッ
シャボッ、シャボッ、シャクワッ、シャクワッ
黒いものは死にものぐるいでれんげ草を沈めようとします。
娘は岸辺から手をたたいて、
「ほァ、あしこが浮いた、ほァ、ここが浮いた、はらァ、こんだあっちが浮いた、はらァ、そっちも浮いたあ」
と叫んで、けしかけます。とうとう夕暮れになるまでそうしていました。
夕暮れになって娘は走って逃げました。
さっき来た道を一目散に走りました。